#80 地球温暖化対策で進んで欲しくない核エネルギー開発

世界最大の石炭産出国で最大の石炭輸出国であるオーストラリア。ブッシュ大統領と米国の影に隠れてあまり取り上げられないが、オーストラリアも京都議定書を批准していない国の一つである。そのオーストラリア、自国のエネルギー需要は自給自足で対応できるが、やはり地球温暖化による影響は無視できない。とくに石炭から出される二酸化炭素は槍玉にあがっていて、このままで対策を講じないと、安いエネルギー源としての石炭の魅力が無くなってしまう危険性がある。いろいろな形で二酸化炭素の排出を抑えるための対策がたてられていてい、その一つが石炭使用にコスト(たとえば税金や罰金)を支払うようにすることである。そのような将来的なコスト高のリスクを考えると、現在は割高であるが、地球温暖化の影響の小さい核エネルギー開発を検討する議論が出てくるのは不思議ではない。さらに、オーストラリアは核燃料の原料であるウランの埋蔵量が世界でも最大規模である。したがって、オーストラリアが核エネルギー開発をしても何ら不思議ではない。これまでオーストラリアには原子力発電所が皆無であった。したがって、石炭の使用が非難されている中、原子力発電に関心がいっても致し方のないことであろう。
しかし、原子力発電にかかるリスクは他のエネルギーとは比べものにならないほど大きい。したがって、オーストラリアでもこの議論については大きく二つに意見が分かれてしまっているようだ。
このように地球温暖化の議論が、再生エネルギーや代替エネルギーの開発や活用を通り越して原子力の使用になってしまうことは非常に悲しいかぎりである。ぜひ、まずは再生エネルギーや代替エネルギーの可能性を議論し尽くし、何も有効な対策がでてこなかった場合のみ、原子力の開発およびそのリスクについて話し合うべきであろう。順番を急いでは命とりである。


参考記事
「オーストラリア、原子力発電開発に強い関心」ファイナンシャルタイムズ
Reference Article: Virginia Marsh, “Australia urged to consider nuclear power,” November 22 2006, FT.com, The Financial Times Limited.