人権問題について真剣に考える時?

先日、日本が国際刑事裁判所(ICC)規定に年内に批准することを表明したと各紙で報道があった。先進国としては遅い参加になるわけだが、これには過去の戦争における日本の諸外国の人々に対する人道的な対応が問題となって参加が困難だったようである。丁度、この時期、国連ではバン・ギムン国連総長が就任した。これに合わせアナン前総長がスタートした国連の中におけるCSR推進機関であるグローバルコンパクトの活動に対してバン・ギムン総長も継続的にサポートすることを発表した。さらに時期を合わせるように、国連においてビジネスと人権問題を統括する特使であるジョン・ラッギ=ハーバード大学教授が人権問題の国際法制度化について前向きなコメントを発表した。

人権問題は、あまり日本のCSRでは注目されてこなかった分野である。その分野に入ると思われるのは女性の社会進出や出産・育児の問題、そして昇進や待遇の男女格差の是正といったところで、あまり社員の人権、顧客の人権、取引先・下請けで働く人たちの人権について話題になることはなかった。

先日、日本の中部地方のある都市の市長さんからのコメントを読む機会があった。この1月で外国人人口が市全体の10%を越えたということである。そのうちの70%がブラジル人で、同市にある日本の大手メーカーの下請工場などで働いている。他方、人件費が高い日本から海外に工場をかまえる日本企業はもう当たり前のことである。このように国内外を問わず外国人労働者が身近になってきている中、日本企業のCSRにおいて人権問題をもう少し話題にしていかないとならないのではないだろうか。今、CSRの関係者の間ではISOのCSRガイドラインが話題になっている。また、環境問題については京都議定書の流れで積極的な取り組みがみられる。しかし、BRICsなどかつての発展途上国が世界経済の主役に躍り出てきている今、世界のCSRの流れは一歩進んで人権問題になっているのではないだろうか。もし、CSR関連の法制度がICCで成立すれば、国内外の外国人労働者からの日本企業に対する訴訟などが増えてくることは間違いないであろう。

Reference:Jennifer Zerk, "Legal issues - Ultimate governance: the international regulation of corporate governance", January 11 2007, Business & Human Rights Resource Centre