#92 ステークホルダーエンゲージメントの例

このブログでも何度か紹介した米国のオーガニック・ブームの仕掛け人の1つであるホールフーズマーケット(WFM)。今回はロサンゼルス近郊の一風変わった町への出店を巡った地域社会との関わりの一例である。LA近郊の町バーバンクは、現在でも西部劇さながらの様子らしい。人々は馬で町を行き来したり、ファストフードのドライブインには馬で来たお客さん向けに馬用のホースライドインが設置されているほど、馬による交通が日常化している。そんな町にWFMが郊外型の大規模スーパーで出店を計画していることが明らかになった。その計画によると、車と馬の交通がスムーズに流れるように道幅がとても広くとられていたバーバンクの中心街の道幅がWFM進出によって狭められることが案に上がっている。馬を毎日のように交通手段として利用している地元住民にとってみると、この計画は唐突なニュースだったようで、すぐに反対運動が起こり、市議会がこの計画を一時中断すると発表した。そして、最終的な議会による判断を来年1月にする予定である。
しかし、ここにきて地元住民の反応に変化がみられてきた。オーガニックで業績を伸ばし、人と地球に優しいイメージを確立したWFMの出店は好ましいことで、もし、これに反対し、規模は縮小できたとはいえ、あまり好ましくない店やオフィスによる開発が進んでしまったら、それこそ地元にとっては大きな損失になる、ことに気づきはじめている。一方のWFMは、バーバンクはLAに近く、有望な商圏ではあるが、ユニークな地元の慣習を尊重し、地元住民との対話を優先し、出来る限り衝突を避けてきている。そして、最終的には市議会による判断を待つことに徹している。
WFMはテキサスに本社がある。もちろんLAにも店舗はあるが、このバーバンクの生活形態は予想外であったようだ。しかし、きちんと地元住民の意向を聞き、出店・開発を焦らずに進めていく姿勢は地元に根付くことが重要なWFMにとっては大切なことである。

Reference: Jennifer Steinhauer, "This Town Ain't Big Enough for the Both of Them?", December 18 2006, Nytimes.com, The New York Times Company