#71 社会的対話がCSRを持続させる秘訣

アパレル・ブランドのGAPは、国際繊維・衣料・皮製品労働組合(ITGLWF)の協力を得、自社のグローバルサプライチェーンにおける
成熟した労使関係を築くために労働者や地域住民との対話(社会的対話)が持続性のあるCSRプログラムの運営に不可欠であると判断し、ITGLWFのスタッフとGAPの社会面を主とするコンプライアンススタッフ100名ほどとのセッションを行った。GAPのコンプライアンススタッフとITGLWFのスタッフは南アジアおよび東南アジアの工場で働く労働者や労働組合向けに持続的なCSRサプライチェーンにおける充実した労使関係の重要性を訴えた。そして労働者による組合活動の自由度や集団交渉が国内そして国際的なスタンダードに沿うものであることを確認している。
GAPはナイキなどと同様にブランド企業である。基本的に自社で衣料品を製造しているわけではない。ほぼ全ての自社ブランド衣料は東南アジアなどの現地工場に発注している。CSRが注目される前は、こういったブランド企業は現地工場における労働環境については見て見ぬふりの姿勢であった。衣料ブランドの競争激化、中国やインドなどの世界経済への復帰で衣料品の単価は大きく下落し、経済への底辺への競争が進行していたのである。したがって、ブランド企業はできるかぎり安く製造し、可能な限りのマージンを上乗せして欧米や日本などの先進国市場で商売をしていたのである。しかし人権擁護団体NGOなどの台頭で、アパレルの現地工場における過酷な労働環境や児童労働の実態が暴かれ、ブランド企業は不買運動など酷く糾弾された。この無責任な対応は世界の消費者から批判を招き、遂にナイキなどは現地工場における労働環境の実態調査、調査結果の開示など自社のCSR/サプライチェーンとして積極的に取り組んでいる。
GAPもこの流れに沿った、非常に良い決断である。サプライチェーンのすみずみにまでGAPのCSRを浸透させるにはやはり対話が欠かせないのであろう。コミュニケーションというと対顧客や監督官庁あるいはマスコミと考えられがちであるが、従業員や工場で働く労働者、海外の工場で働く労働者やバイトなどとのコミュニケーションがCSRを持続的にしていくには大切なのであろう。

参考記事
「社会性CSRに継続性をもたせる」グローバルユニオン
Reference Article: “Making the ‘Social’ in CSR Sustainable,” November 5 2006, Global Unions.