#68地球温暖化で対立する議論

今月6日〜17日にケニアのナイロビで国連による地球温暖化の会議が開催される(http://unfccc.int/2860.php)。これは、京都議定書に批准する関係国や支援機関(COP/MOP2)の第2回目の会合かつ国連クライメート・チェンジ・コンベンション(COP12)の第12回目の会合にあたる。この会合では京都議定書の目標となる2012年以降の次の5年間の温暖化防止対策を議論するようだ。
日本でも最近は排出権取引などが活発となり、クールビズウォームビズといった温暖化への意識を高める啓蒙活動から、より本格的な対策をする段階へと移ってきたように思う。しかしながら、世界では依然として温暖化防止をめぐる議論は少なくとも3つ対立しているようだ。
一つには、2012年までに1990年の温暖化ガス排出レベルまで削減する京都議定書の遂行。日本やヨーロッパが取り組んでいる。日欧のケースは、省エネ化、エネルギー使用の抑制などが取り組みの中心である。2つ目はアメリカやオーストラリアのように京都議定書には参加せずあくまでも自主的な削減目標を設定して取り組むケース。その場合に議論されているのが、温暖化への課税である。そして、3つ目は、発展途上国のように京都議定書の温暖化ガス削減の制約がかからない国々である。これらの国々の主張は米豪の一部とも共通する意見であるが、京都議定書のようにエネルギー使用を抑制することを目指すのではなく、温暖化ガスの排出が低いあるいはゼロエミッションの代替エネルギー開発に投資をすることである。
事実、国連の調査では、2000年‐2004年のヨーロッパにおける温暖化ガスの排出量は減るどころか2.4%のプラスであった。一方のアメリカは1.3%の上昇に留まったという結果がある。また、日本でも環境省の最近新聞で発表されていたが温暖化ガス排出は増えているようだ。京都議定書に積極的な両地域の温暖化ガス削減対策が思うように上がっていないことが、米豪が参加しない理由であり、京都議定書発効後も異論反論が絶えない理由なのであろう。
エネルギー使用の抑制や省エネによる温暖化ガスの削減は、取り組む側としては目標数値が見えているので現実的でやりやすいように思えてしまう。しかし、同時に経済成長は続いているので、成長と抑制という反対にベクトルを持つことをしなければならないので、実際には3つの中でも一番困難なのかもしれない。代替エネルギーなどへの投資は、その投資効果が明確に示せないので、このような世界規模の取り組みとしてはあまりあわないのであろう。これらの2つの方法で最も活躍するものは温暖化ガス排出権取引である。これは省エネと代替エネルギー開発の2つを同時に達成できる方法である。これを推進し、国際的なルール・市場作りを目指すことが最も効果的かもしれない。また、3つの中で最も妥当で堅実な対策は課税であろう。これは課税をすることで温暖化ガス排出を抑制すると同時に課税収入を温暖化防止プロジェクトに投資することができる。ただ、これも排出権取引の国際ルール作り同様に、各国の政府、行政のリーダーシップが重要である。

参考記事
「温暖化で議論が分かれている最中に始まる地球温暖化会合」ニューヨークタイムズ
Reference Article: Andrew C. Revkin, “Talks to Start on Climate Amid Split on Warming,” November 5 2006, nytimes.com, The New York Times Company.