#33 良い事をしてスウェットショップを無くしていこう

あまり政治的な話はしたくないのであるが、政治の良し悪しで社会の利益は大きくかわってしまう。とくに外交問題国益を経済なり駅を国益ととらえるのか、経済的な利益も含めた二国間での共通の社会利益全体をみていくのかで、対応策は変わってくるのであろう。しかし、外交そのものを進められないケースも世界では残念ながらある。たとえば、今年7月に発生したイスラエルレバノンイスラム勢力のヒズボラ)などの宗教・民族紛争である。宗教・民族というと異教徒、異民族が仲良くやるのは難しい、ということに結論づけられがちであるが、実際には「歴史」の役割が大きいのである。「歴史」を無視して宗教・民族紛争は語れないのであろう。この地域も何千年も前から帝国や王国などの支配、戦略を受けてきて、さらに現在ではイスラエルは米国、レバノン(正確にはヒズボラ)はイランやシリアなどがサポートしている。
このような複雑な状況下で、マサチューセッツ州のソーシャルアントレプルナーが立ち上がった。アダム・ニーマン、彼はユダヤアメリカ人である。ユダヤ人が不況にあえぐパレスチナの繊維工場を使ってオーガニック製衣料やアクセサリーを生産し、それを世界で販売していこう、と計画している。今年12月にイスラエルのテルアビブで小売店を開き、来年以降ロンドンとニューヨークにも店を開いていく計画である。イスラエルパレスチナというとこれも宗教・民族・歴史の紛争関係である。ユダヤ人がパレスチナの不況であえぐ人々を支援する。そして、オーガニック製の原料を用いたフェアトレードの認証を受ける予定であるが、他のフェアトレードの生産者とは異なり、アダム・ニーマンは労働組合が設けられている繊維工場・会社とのみ契約をする方針である。したがって、先日フェアトレードコーヒーの回でお伝えしたような最低賃金が支払われないような雇用状況にはならないと考えられる。
アダム・ニーマンのブランド「No Sweat」が成功すれば、政治的な困難を乗り越えかつ地域開発を行い、オーガニック製でさらに労働者の雇用環境にも配慮したビジネスモデルが成立することになる。まさにWin-WinCSRを達成できる。


参考記事
「良い事をしてスウェットショップを無くしていこう」ハーレッツ
Reference Article: Daphna Berman, “Doing good is No Sweat”, September 1 2006, Haaretz.com, Haaretz