#22 BMW大学

世界の自動車メーカーが工場や研究拠点を続々と設けているサウスカロライナ。南部のデトロイトと呼ばれている。ここの州立大学クレムソン大学がサウスカロライナに進出しているBMWとこれまでの産学連携を越えた提携関係を築きつつある。クレムソン大学はサウスカロライナ州の変貌にあわせるように自動車技術やデザインの研究に力を入れてきた。そこにBMWが目をつけたのだ。BMWはクレムソン大学が計画する1700億円の自動車研究・教育センター設立に対して約12億円の資金を寄付したことがスタートである。この寄付によりBMWは同センターに所属する教授および学生との共同研究が可能となり、その研究成果、特許、著作権の使用ライセンスを優先的に獲得することができる。一方、クレムソン大学はBMWとの提携により、米国初の自動車エンジニアリングの博士課程を提供することが可能となった。また、共同研究の特許や著作権はクレムソン大学の所有となりBMWなどからのライセンス料が収入として見込める。さらに、クレムソン大学はこの提携を軸に全米の公立大学のランキングでトップ20入りを目指している。産学連携が活発な米国においても、これほどお互いの利益が合致し、提携内容・成果を明確にした例は珍しい。提携内容に盛り込まれているのだろうか、クレムソン大学のキャンパスではBMWばかり走っているそうだ。
日本において産業界がここまで教育機関との積極的な提携を望んでいるのかはわからないが、少子高齢化や国際展開で他国の大学に大きく遅れている日本の大学機関は、このような積極的な産学連携を望んでいても不思議ではない。コットンと繊維工場しかなかったサウスカロライナ州が南部のデトロイトとして変貌するほどインパクトのある産学連携を生み出すことができるのか、CSRを切り口に大胆な地域社会活性化策を検討していくべき時なのかもしれない。

参考記事
BMW様向け大学」ニューヨークタイムズ
Reference Article:
Lynnley Browning, “BMW’s Custom-Made University”, August 29 2006, nytimes online, The New York Times Company.