#18 M&AとCSR:ライトエイドの事例

アメリカの大手ドラッグストア・チェーンのライトエイドが大型の企業買収と全米規模の社会貢献活動のニュースが同日にあった。ライトエイドは全米27州で3,320店舗を展開する大手ドラッグストア・チェーンの一角である。このライトエイドがカナダ系で米東海岸地域を中心に店舗展開をするエッカード・ブルックス・ファーマシーを買収することで最終調整中ということである。この買収で、米国のドラッグストア・チェーンは新生ライトエイド、ウォルグリーン、そしてCVSの3強時代に入ることになる。ほぼ同じタイミングで、ライトエイドの寄付基金が社会問題化している糖尿病の治療や研究のための資金を集めるために米国糖尿病協会(ADA)と協力しファンドレイズのイベント(”America’s Walk for Diabetes”)に対し総額5万ドル(約575万円)の寄付をすることを発表した。ライトエイドの薬剤師が中心となり全米100ヶ所で8月26日から11月5日の期間、糖尿病治療や研究開発の資金を集めるためのウォーキングを実施する。西はカリフォルニア州サンディエゴから東はメイン州ポートランドまでライトエイドのストアがある地域を中心に約100市で開催される。このウォーキングイベントにはライトエイドの薬剤師以外にも従業員、そしてライトエイドの顧客も自由に参加し、糖尿病治療にむけたファンドレイズ活動を支援することができる。ドラッグストアの看板である薬剤師がこの活動の表に立ち、そして現在老若男女問わず深刻な問題になっている糖尿病の治療(糖尿病患者は予備軍も含め全米で2100万人いると推測されている)に向けこのような活動をすることは、まさに事業のリソース(薬剤師と店舗展開)をCSRに有効に活用した良い例である。そして、本業では大都市の集まる米国東海岸にチェーン展開するエッカード・ブルックス・ファーマシーを買収し、事業基盤の拡大を行っている。人口が集中する大都市には糖尿病患者およびその予備軍も多くいるため、このライトエイドの試みは好意的にとられることになるであろう。
日本でも企業の買収が最近増えてきているが、とくに消費者をターゲットにした業界の場合は、既存の顧客だけではなく、潜在的な顧客も含めたステークホルダーに対して、どのような社会的な貢献・還元ができるのか、ということを考えてみるのが一案であろう。ビジネス上の効率化・合理化で株主の一部を説得することはできても、将来的な成長期待がみえなければ二の足を踏んでしまう。CSRとはこの成長期待のバリューを創造する考え方であり、行動である。

参考記事
「米大手ドラッグチェーン・ライトエイド 糖尿病治療・研究開発にウォーキングイベント」ビジネスワイア
「ライトエイド、エッカード・ブルックス・ファーマシー買収最終調整」ウォールストリートジャーナル
Reference Article:
Rite Aid Pharmacists Across the Country Lead the Way to Help Find a Cure for Diabetes; Pharmacists Captain Walk Teams to Raise Funds for the American Diabetes Association Through ‘America’s Walk for Diabetes’”, August 22 2006, Business Wire
Dennis K. Berman and Amy Merrick, “Rite Aid Is Close to Buying Eckerd and Brooks Drug Chains”, August 23 2006, WSJ.com, Dow Jones & Company, Inc